糖尿病ケトアシドーシスとは?症状や治療法は?【糖尿病の合併症】
インスリンの作用不足によって生じる急性の代謝失調である糖尿病ケトアシドーシス
糖尿病は主にインスリンの作用不足による高血糖を主徴とする慢性の代謝性疾患です。
一度発症してしまうと感知する可能性は極めて低くほぼ一生治療を継続しなければならない糖尿病ですが、そのおそろしさは糖尿病自体だけでなく腎症、神経障害、網膜症などの三大合併症をはじめとした数多の合併症を引き起こすところにもあります。
糖尿病合併症は高度のインスリン作用不足による急性合併症と、長期間の高血糖持続による慢性合併症に大別することができます。
今回は急性合併症の1つである糖尿病ケトアシドーシスについて解説していきたいと思います。
糖尿病ケトアシドーシスとは?
糖尿病ケトアシドーシスは極度のインスリンの作用不足によって生じる急性の代謝失調です。
糖尿病ケトアシドーシスの本態はアシドーシスと脱水の症状であり、若者や妊婦に多いとされ、主にⅠ型糖尿病の発症やⅠ型糖尿病のインスリン注射不足、感染などによる過度なインスリン抵抗性により生じます。
末梢組織(筋、脂肪組織)では糖の取り込みをインスリンに依存しているので、何らかの原因でインスリンの作用が絶対的に不足するとエネルギーとして組織が糖を取り込むことができなくなります。
それにより実際はたとえ高血糖であったとしても、飢餓状態であるのと同様の生理反応を示し、体は糖を合成しようとします。
この際に行われる体内反応の1つが脂肪組織での脂肪分解の亢進です。
脂肪が分解されることにより生じた遊離脂肪酸は肝臓でβ酸化を受け、ケトン体となります。
ケトン体は酸性物質であり、過剰に産生されるとアシドーシスを生じます。アシドーシスとは血液が酸性に傾いた状態のことを指し、ケトン体によって酸性に傾いている状態のことをケトアシドーシスといいます。
ケトアシドーシスの症状としてクスマウル大呼吸(速く深い呼吸)や嘔吐・腹痛、意識障害などがあります。
また呼気からアセトンの臭いがするのもケトアシドーシスにおける特徴の1つです。
一方で筋組織においては蛋白の分解が亢進します。
蛋白分解によって生じたアミノ酸は、脂肪分解によって生じたグリセロールとともに肝臓で糖新生に利用されます。
肝臓ではこれらに加えてさらにグリセロールの分解も行っており、糖新生やグリセロール分解からグルコース、糖が生成されます。
すでに高血糖である状態からさらに糖が生成されることにより、血症における浸透圧が上昇し、細胞内脱水が生じるようになります。
この結果、症状としては多尿・多飲・口渇、皮膚の乾燥、全身倦怠感、意識障害などが引き起こされてしまいます。
ケトアシドーシスと脱水の症状が重なり重症化すると昏睡状態に陥ることもあります。
糖尿病ケトアシドーシスの治療法
糖尿病ケトアシドーシスにおいて重要な治療のポイントは脱水の補正、インスリンの補充、電解質の補正の3つになります。
通常アシドーシスはインスリンの補正に伴って改善されるため特別な補正を行う必要はありませんが、とりわけ重度なアシドーシス(ph<6.9)に対しては重炭酸ナトリウムを投与することもあります。
これらの治療は体内における様々な状態を入念にチェックしながら行われるため、集中治療室で行われます。
脱水の補正には生理食塩水の輸液療法、インスリンの補充にはインスリンの静脈投与、電解質の補正にはカリウムの投与が行われます。
糖尿病昏睡を生じる糖尿病ケトアシドーシスは不適切なインスリン治療やシックスデイの際の不適切な対応が誘因となることが少なくありません。
これらの原因はしっかりとした指導・治療を受けることによって予防が可能であり、特にⅠ型糖尿病における独自の判断でのインスリン中断は決して行ってはいけません。
しっかりと医療機関の指示を守ることが大切になります。
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